平成20年1月23日、札幌市議会文教委員会の審議要旨

                                           

 札幌市議会文教委員会は午後1時から開かれ、「北海道に夜間中学をつくる会」および「札幌遠友塾自主夜間中学」の「義務教育を受ける機会が実質的に得られていない人たちへの修学保障を求める陳情」は、陳情第14号として審議されました。


 文教委員会は、@札幌遠友塾に対する学校教室の提供と財政支援 A北海道におけるセンター校の役割を担う公立中学校夜間学級設置を求める 陳情について、陳情者の陳述と質問、その後の審議を行いました。


 遠友塾の受講生やOB、スタッフら、「つくる会」会員など、36人が傍聴しました。最初に、工藤代表が委員会に提出した各種資料をもとに陳情内容を説明しました。陳述時間は3〜5分と言われていましたが、10分を超える熱弁となり、委員の方たちも真摯に聴いてくれました。


 陳述の要点は以下の通りです。


 昨年5月、札幌市長および札幌市教育委員会に提出した「5項目の要望」と、札幌市議会平成19年第2回定例会での小倉市議(市民ネットワーク)、第4回定例会での国安市議(公明党)の代表質問とその理事者側答弁にもとづいて、工藤代表は陳述を行いました。



 以上の点から、札幌遠友塾において、受講生の要望に応え、授業時間を増やすことは、学校教室の使用と札幌市の財政支援がなければできない。さらに、札幌市に公立夜間中学の設置検討委員会を設けるよう要望しました。また、札幌市と同じ政令都市で、自主夜間中学の共同事業を行っている北九州市や、来年度、公立夜間中学を開設させる千葉市、新たな試みとして不登校生徒と義務教育未修了者を一緒に授業している京都市立郁文中学校、昼間の学校で義務教育未修了者を受け入れて岡山市のシニアスクールなどを現地調査するため予算措置を講じてもらいたい、と訴えました。


 このあと、工藤代表は長谷川委員(民主党・市民連合)からの受講生の年齢構成や修学できなかった原因・理由、遠友塾の収支決算からスタッフの手当、教材・教具どの利用状況などについて、質問に答え陳述を終えました。


 つづいて、文教委員と理事者側との審議が行われました。


 長谷川委員

  1.  「この問題は要望があったから対応するというものではない。教育の機会均等の立場から市教委が主体的に考えるべきもの。市教委の基本スタンスを聞きたい」。

  2.  また、公立夜間中学の設置について、「陳述者から、全国夜間中学の状況について説明があった。地域独自の運営がなされているようだ。公立が必要なのか、生涯教育の中でやるのが望ましいのか、1年かけてじっくり調査し、札幌市に合った運営方式、取り組みを検討すべきではないか。まず、速やかに現地調査をしてもらいたい」。

  3.  札幌遠友塾に対する学校施設の提供について、「教室がなく、教材置き場にも困っているという。要望の地下鉄大通り駅から4つの駅範囲という地理的条件にあえば、1教室でも2教室でも提供できないか。真剣な学びの姿に応えていくには、最低限の固定した学習の場所が必要だ。そのことを柔軟に幅広く考えてもらいたい」と質す一方で、市教委に遠友塾の見学を強く求めました。


 加藤生涯学習部長は、さまざまの学びの要望に応える遠友塾の活動を重く受け止めているとし、「こうした学習意欲にどう応えられるか、具体的に何ができるか積極的に検討していきたい」。


 公立夜間中学の他市の調査について、西村学校教育部長は、「すでに調査票を配布しての調査を進めており、聞き取りも行う中で、実態調査を踏まえ札幌市としてのあり方を検討していきたい」。


 加藤生涯学習部長は「お年寄りが通いやすい大通り駅から4駅以内との要望だ。その範囲で教室利用は現状では難しく、まとまった数は無理だが、相談しながら要望に応えられるようにしたい」と答えました。


 長谷川委員は9月開校の大通高校が、不登校や中途退学者、事情のある人たちを受け入れるコンセプトを持った学校であることから、「その延長線で、学びたい市民に機会を与えるものにできないか」と再質問。


 西村学校教育部長は「課題の1つとして、具体化を検討したい。遠友塾と具体化に向けた話し合いをしていきたい。」と答えました。


つづいて宗形委員(自民党)が質問。


 札幌遠友塾の活動に奥岡教育長の感想を求めた。つぎに、社会教育と学校教育の区別を市教委に質した。


 奥岡教育長は、「それぞれの事情で、戦争が一番であると説明されたが、過去に十分に学ぶことができない人たちに、学びの場を提供し、夢や希望をかなえている。19年もの本当に苦労した団体の活動は、貴重なものであり、深く敬意を表する。」と感想を述べました。


 西村学校教育部長は、学校教育とは包括的に、組織的、体系的なカリキュラムをもち、計画的に実施される教育である。公立夜間中学は学校教育である。それ以外は、社会教育として知識と教養を求め、幅広く自由な枠内での自主夜間中学は社会教育の範囲と考える、との見解を述べました。


 宗形委員は、札幌市における未就学者の実態数字を把握すべきでは。センター校の役割をもつ公立夜間中学校の設置について、道教委の見解はいかがか。中国帰国子女の日本語を学ぶ場は、遠友塾以外にないのか、など三点の質問をしました。


 西村学校教育部長

  1.  最初の質問に、未就学者の人数を調査した資料は存在していない。15歳以上の実態調査はプライバシーの問題もあり、膨大な事務作業量を必要とする。

  2.  二番目の質問に、道教委は設置主体の市町村が設置を届け出た場合、指導助言や教員配置など財政措置をするとの見解を示している。

  3.  三番目の質問に、帰国子女らが学ぶ手立てについては厚労省の所管であり、北海道中国帰国者支援・交流センターが対応していることなどを述べました。


 宗形委員は遠友塾に対する財政支援として、昨年暮れに成立した「市民まちづくり活動促進条例」にある基金などを援用できないかを質しました。


 加藤生涯学習部長は、「条例の対象と考えるが、市民まちづくり活動推進室と緊密に連絡をとり、情報提供をできるようにしていく」との姿勢を示しました。


 宗形委員は、憲法第26条にもとづく教育の場の提供として、大通高校の教室提供を要望して質問を終えました。

 

高橋委員(公明党)の質問。


 生涯学習から、遠友塾に支援できないのか。遠友塾の活動への市教委としての評価を求めるとともに、「ボランティアにお願いしていいのか、本来、行政がかかわるべきものではないか」とし、「大通高校はキーワードだ。平成22年度に新校舎ができたあかつきには、活動の場として提供できないのか。定期的に使えるようお願いしたい」と質しました。


 西村学校教育部長は、「札幌大通高校は不登校、中途退学者、帰国子女など開かれた学校作りがコンセプトであり、学校運営に支障のないかぎり、教室利用を検討して行きたい」と答えました。


 また、高橋委員は、「公立夜間中学校設置へ向けた調査をしっかり進めてほしい。陳述者から検討委員会設置をとの提言があったが、総務部を含め横断的な組織をぜひ考えてもらいたい。自分に責任がなく学べなかった人の、中学卒業証書への思いも汲んでほしい」と質問しました。


 奥岡教育長は、「教育委員会としても、学びの場の提供に施設整備を含め、真摯に受け止め、検討していきたい。検討委員会の設置については、教育委員会の中で一体となって取り組んで行く。まずは調査を進めて行き、できれば公立中学校についても考えていきながら、現地調査を早めるにはどういう形がいいか検討したい。」と答えました。


村上委員(共産党)の質問。


 遠友塾に対するこれまでの支援の経過を質問。


 加藤生涯学習部長は、平成3年に旧市民会館での4教室の確保。市民会館の老朽化にともない、平成15年に、統合した豊水小学校、中央勤労者会館の提供、平成18年に、代替施設として教育文化会館の紹介、平成19年に使用料の半額減免措置などをあげました。


 村上委員は学びたい人たちは高齢者が多いことから「可能な支援を急ぐことが必要と思う。調査がなされず実態が把握できないのであれば、(遠友塾など)市民にしっかり知らせていくべきだ」と指摘しました。


 佐藤委員(市民ネットワーク北海道)もあらためて市教委の姿勢をただし、他市の現地調査など前向きの取り組みを求めました。(質問や答弁は重複するので省略します)。


最後に宮本委員(自民維新)が質問しました。


注: この文章は、丸山さんが傍聴記録をとり、それを飯塚が録音テープとつき合わせ加筆・訂正し要旨にまとめております。テープでの聞き取りづらい箇所がいくつかあり、誤り、抜けがあるかもしれないことをおことわりします。