「北海道に夜間中学をつくる会」第3回定期総会まとめ


「北海道に夜間中学をつくる会」の第3回定期総会が、5月31日(日)午後1時半から札幌市教育文化会館で開かれました。総会に先立って、札幌遠友塾が市立向陵中の教室で学べるよう尽力してくださった同校元校長佐藤信さんの講演が行われました。ついで、北海道各地に開校した自主夜間中学校から連帯のメッセージを受けました。

総会は委任状を含め過半数の会員出席によって成立したことが確認され、議長選出をし議案審議に入りました。第1号議案は、2008年度活動報告、同決算および会計監査報告。第2議案は、2009年度活動方針、収支予算案。第3号議案は、役員選出と新役員挨拶。(総会議案書は別添

 

 工藤共同代表は、その挨拶で「北海道に夜間中学をつくる会」(略称「つくる会」)設立に至った経緯を説明。その一つは、札幌遠友塾での行政要望では、授業運営の多忙さから、会場確保の問題などが進展せず、活動を担う組織の設立が必要であったこと。またその二は、遠友塾に通学する受講生から、自主夜間中学の開校を全道に広げて行く必要があった。設立後すぐに、道や市、教育委員会などの行政、議会などへ要請、陳情を重ねた結果、昨夏には札幌市公立学校の教室での授業が試行的に認められ、今年度4月からの向陵中での授業につながったこと。またそれらの要望を通じ、昨春の旭川に続き、今春には函館、釧路でも自主夜間中学が開校することになり、会員はもとより多くの方々のご支援に感謝を述べました。

 講演にあたっては、試行的授業において、教室提供を快く受け入れてくれた向陵中の元校長の佐藤さん(4月から本郷新記念札幌彫刻美術館長)に、札幌遠友塾を迎えるに至った心情を話してもらいたく、依頼した、と講師紹介をしました。

 

 「わたしの教師人生」とのテーマで講演した佐藤さんは、「教室提供に皆さんから感謝をいただいているが、私たちこそ感謝したい」と述べ、札幌遠友塾に学ぶ生徒たちを紹介したビデオを見た子どもたちが、感想文に自分たちがいかに恵まれた環境にいるか、しっかり勉強しなければ、といった自覚をつづるなど、遠友塾との交流が教育上のよい成果を生んでいることや、昨秋の合唱コンクールの際に、聞きに来ていた遠友塾生徒が終了間際に「感動した!」と叫んだことに一瞬静寂になったが、次第に拍手の嵐となった。生徒や父母から自然発生した「受講生の素直な感動」への感動だった、と話しました。そして、わずかでも人に、社会に役立つことに喜びを感じられる生徒、学校、地域づくりの中に、遠友塾の受け入れもあった、と述べました。

 このあと教師としての原点を、新人教師2年目に小児マヒの生徒を受け持った時のいじめグループと対応したエピソードで紹介。小児マヒの子の父親が、迷惑をかけるから修学旅行は辞退すると言っており、私は親を説得しているがどう思うかを生徒たちに正直に話したところ、いじめグループが「おれたちが面倒をみる」と言い出し、一緒に行くことになった。

しかし注意の裏でいじめを繰り返し、裏切られた思いでいた私はグループを信用していなかった。それが旅行1日目にはマヒの子の荷物を持ったり、バスを止めておむつを買ってきたり、2日目の夜にはその子を囲むように雑魚寝をして守っていた。それを見て私は反省した。あとで聞いた話だが、グループがその父親に「面倒をみるから」と説得に行ってことも知った。

いじめは絶対許さない、そして心底をさらして話をすれば子どもたちは分かってくれるというのが信念となったし、退職までの貫いてきた、と話しました。


この後、各自主夜間中学から連帯のアピールがあり、札幌遠友塾は井上事務局長が「20年目の節目に学校での授業が実現した。つくる会との綿密な連携があってのことで、他の自主夜間中学もそうした連携ができるよう願っている。各地との交流も図りたい」と述べました。

出席の都合がつかなかった旭川遠友塾については、窓口の泉さんが、「昨年4月開校で今年23人が2年生になり、新しく19人が入った。会場問題が一番心配だったが、医療専門学校から施設利用の申し出があり解決した。当初マスコミとのトラブルもあったそうだが、今は受講生から積極的に市民に呼びかけていこうとの動きになっている。受講生同士の交流も願っているとのこと」と状況を話しました。

函館遠友塾も出席の都合が付かず、窓口の工藤朱美さんが「きぼうbS」別添)に寄せられたアピールを代読しました。入学者は現在45人とのことです。

釧路の「くるかい」からは添田事務局長が出席し、現状を報告しました。釧路の場合は国勢調査(2000年度)に表れる義務教育未修学者267人だが、その内65歳以下が90人と、他の地域の65歳を超える高齢者が占めている実情に対し、働ける世代が多いのが特徴とのこと。予想を超える希望者のため、火曜の授業日を午後5時15分からと同7時からの2部に分けたが、「5時15分からの希望が圧倒的で、仕事を持っているスタッフが集まれる時間とミスマッチなのが悩み」だそうです。会費は月500円で、「幅広い年齢層なので、遠足や宴会を兼ねた宿泊旅行などレクリエーションや交流活動に力を入れていきたい」と締めました。

続いて広田、小林両道議からの祝電が披露され、臨席していた札幌市議会の谷沢文教委員長(公明党)からは、「市議会の問題として自主夜間中学の拡充と、その先にある公立の夜間中学設置に向けて取り組んで行きたい」との力強い支援の言葉をいただきました。


総会は、出席本人29人、委任状提出66人と、合計95人となり、総会員数153人の過半数に達し成立。議長に会員の小寺さん、村井さんの2人を事務局推薦で選出し、議題審議に入りました。

第1号議案の2008年度活動報告は清水事務局長、会計決算報告は工藤朱美さん、会計監査報告は新野さんがそれぞれ行い、原案通り承認されました。決算の支出ではエルプラザのブースやロッカー使用料で「賃貸料」の項目が設けられました。札幌遠友塾から半額補助を受けている旨の説明がありました。

第2号議案については2009年度活動方針案を工藤共同代表が、収支予算案については工藤朱美さんが説明、いずれも原案通り承認されました(議案書参照)

収支予算案では会費について前年度決算額より09年度予算額が減額になっている点に「会員が減るということか」との質問が出ました。工藤会計担当は「当初、会員になった人で翌年に会費納入がない場合があり、減額を見込んでいるが会員数が減っているわけではない」と答え、了承されました。


第3号議案の2009年度の役員選出については清水事務局長が説明しました。新しく共同代表に亀貝さんを迎え、今回で退任する清水事務局長の後任に泉さんが務める、事務局員は従来メンバーに加え小寺さん、谷岡さん、富田さんが入るなどの新体制案を提示(議案書参照)、拍手で承認されました。


この後、08年度決算に55万円余の繰越金があり、09年度予算案でも収支で約64万円の黒字となっていることから、「このままでは繰越金が積もる一方になるのでは、と危ぐする。会員の方には、具体的活動方針をあげて予算をどれだけ使うのか、などの説明が必要なのではないか。余剰積立をするのでなく、活動予算として計上する必要がある」との意見が出されました。

事務局長や代表は、これまではスタートしたばかりで収支の見通しが不透明だったため、備品や消費材の購入に自己負担していたものがかなりあった。今後は領収書を付けてきちんと処理するようにしたい。どう活動に振り向けて行くか、それを会員の方にどう報告して行くかなどを含めて事務局会議で詰めていきたい、と答え了承されました。


最後に、今回で事務局員を退任する清水事務局長があいさつ。「今日まで事務局長の仕事を全うできたのも、皆さんの協力と支援があってのこと。本当にありがとうございました」との感謝の言葉があり、総会の全日程を終えました。