<街のうた>
夫婦
2009.04.18 北海道新聞朝刊地方


 「本当に、素晴らしい三年間だったね」。こう口をそろえる北広島市の岩倉敏男さん(78)、弘子さん(75)夫婦。三月、札幌市の自主夜間中学「札幌遠友塾」を卒業した。

 ただ、三月十八日の卒業式はそろって欠席した。敏男さんが脳腫瘍(しゅよう)の治療のため、二月から入院を余儀なくされたからだ。

 二人とも中学卒業後、すぐ働いた。授業で初めて覚えるアルファベットや数学の計算。頭を抱えた時は、同級生と励まし合った。夫婦隣同士で座るのはなんだか恥ずかしかったから、いつも席を少しずらして座った。

 入学してから二年と十カ月、ほとんど休まなかった。「みんなと一緒に卒業式に出たかったなぁ」。敏男さんは式の当日、病室でつぶやいた。

 二日後、スタッフから卒業証書が送られてきた。同級生が式の写真と寄せ書きを届けてくれた。心遣いが胸にしみた。

 手術を無事終え三月三十一日に退院。先日、検査のために病院に行くと医師が言った。「年の割には、脳の回復が早いね」。敏男さんは「遠友塾でいっぱい頭を使ったからかな」と照れ笑い。もう少し暖かくなったら二人で札幌に行く。みんなにお礼を言うために。(本庄彩芳)

北海道新聞社