◎企画【わたし学びます】〜函館遠友塾(4)〜/葛西サチ子さん(67)

 民間で運営する自主夜間中学「函館遠友塾」では誰もが“同級生”だ。年齢や職業、経歴は一切関係ない。入学試験もない。函館市亀田港町に住む葛西サチ子さん(67)は、半世紀ぶりにできた約50人のクラスメートに喜ぶ。

 「『学ぶ』のが目的なのはみんな同じ。だから気取らなくていい」。自分で選んだ学びの道に間違いはなかったと確信している。

 ◆1942年、桧山管内今金町で生まれた。両親はジャガイモやトウキビなどの畑作と酪農で生計を立てていた。9人きょうだいの5番目。小、中学校に通いながら、幼い時から親の手伝いをした。学校での勉強は得意でなく、体を動かして働く方が性に合っていた。きょうだいは皆、学校卒業後は今金営林署に勤務した。自身も17歳から同署で働いたが、6歳年上の男性と結婚して辞めた。19歳の時だった。

 この日、遠友塾の数学の授業は「くり下がりのある引き算」がテーマだった。

 「40―18」「60―35」―。10の位から1(10)を借りて計算するのがポイントだ。

 スタッフの解説の後、塾生はプリント問題に挑戦した。「何十年も家計簿を付けたから計算は任せて」と一気に解く塾生もいれば、うんうんうなってスタッフを呼び止める人もいる。隣の人と答え合わせし、間違いに気付いて慌てて直す人も。

 足し算も混ざったプリント問題に、葛西さんは頭では分かっていてもパニック状態になった。結局時間切れになり、数問間違えてしまった。  自宅に帰り、間違えた問題をゆっくり解き直すのが日課だ。朝起きて夫が目を覚ますまでや、夜寝る前の数十分。静かな中、茶の間のテーブルで集中して鉛筆を走らせる。すると、ちゃんと解ける。ほっとし、次こそは、と意気込んだりもする。「学び」を味わうひとときだ。(新目七恵)

函館新聞 2009/11/25