68歳12年かけ夜間中学卒業 大西さん感涙



卒業証書を受け取る大西さん(奈良市の市立春日中学校夜間学級で)


 奈良市西木辻町の市立春日中学校夜間学級(石本博康校長)で15日、生徒4人の卒業式が行われた。戦後の混乱や家庭の事情で学校に通えなかった大西茂子さん(68)(奈良市肘塚町)は12年間をかけて巣立ちの日を迎えた。卒業証書を受け取ると目を潤ませ、「泣くことばかりだった人生が、自分に自信を持てるようになった」と胸を張った。


 大西さんの子どものころは終戦直後。家庭が貧しく、弟や妹の世話、家事の手伝いで学校に通えなかった。家庭を持っても、家族から届く手紙が読めず、返信も書けず、悔しかった。読み書きができないことがコンプレックスだった。


 息子2人を育てあげ、独立した後の12年前、ヘルニアの手術を受けた。ベッドの上で一人でいると「世の中に取り残された」ような気分になった。「生まれ変わった気で学び直したい」と学校の門をくぐった。


 少しずつ字を覚え、計算の練習をした。新聞が読めるようになると、世界が広がった気がした。詩を書いた。自分の気持ちや考えをまっすぐに表現できることがうれしかった。いまでは、友人と手紙のやり取りをするのが楽しみになった。


 大西さんは「昔は泣くことしか知らなかった。学校で、前向きに道を切り開く自信が持てるようになった。友人もたくさんでき、とても感謝しています」と目を輝かせていた。


 式では石本校長が卒業生一人ひとりに卒業証書を授与。卒業生は「楽しかった思い出ばかり。いつまでも覚えてるよ」と話した。

2008316日 読売新聞)