谷川俊太郎の「世界人権宣言」


詩人の谷川俊太郎さんが、世界人権宣言をわかりやすい言葉にしてくださいました。


1条 みんな仲間だ


わたしたちはみな、生まれながらにして自由です。ひとりひとりがかけがえのない人間であり、その値打ちも同じです。だからたがいによく考え、助けあわねばなりません。


2条 差別はいやだ


わたしたちはみな、意見の違いや、生まれ、男、女、宗教、人種、ことば、皮膚の色の違いによって差別されるべきではありません。 また、どんな国に生きていようと、その権利にかわりはありません。


3条 安心して暮らす


ちいさな子どもから、おじいちゃん、おばあちゃんまで、わたしたちはみな自由に、安心して生きていける権利をもっています。


4条 奴隷はいやだ


人はみな、奴隷のように働かされるべきではありません。人を物のように売り買いしてはいけません。


5条 拷問はやめろ


人はみな、ひどい仕打ちによって、はずかしめられるべきではありません。


6条 みんな人権をもっている


わたしたちはみな、だれでも、どこでも、法律に守られて、人として生きることができます


7条 法律は平等だ


法律はすべての人に平等でなければなりません。法律は差別をみとめてはなりません。


8条 泣き寝入りはしない


わたしたちはみな、法律で守られている基本的な権利を、国によって奪われたら、裁判を起こし、その権利をとりもどすことができます。


9条 簡単に捕まえないで


人はみな、法律によらないで、また好きかってに作られた法律によって、捕まったり、閉じこめたり、その国からむりやり追い出されたりするべきではありません。


10条 裁判は公正に


わたしたちには、独立した、かたよらない裁判所で、大勢のまえで、うそのない裁判を受ける権利があります。


11条 捕まっても罪があるとはかぎらない


うそのない裁判で決められるまでは、だれも罪があるとはみなされません。また人は、罪をおかした時の法律によってのみ、罰をうけます。あとから作られた法律で罰を受けることはありません。


12条 ないしょの話


自分の暮らしや家族、手紙や秘密をかってにあばかれ、名誉や評判を傷つけられることはあってはなりません。そういう時は、法律によって守られます。


13条 どこにでも住める


わたしたちはみな、いまいる国のどこへでも行けるし、どこにでも住めます。別の国にも行けるし、また自分の国にもどることも自由にできます。


14条 逃げるのも権利


だれでも、ひどい目にあったら、よその国に救いを求めて逃げていけます。しかし、その人が、だれが見ても罪をおかしている場合は、べつです。


15条 どこの国がいい?


人には、ある国の国民になる権利があり、またよその国の国民になる権利もあります。その権利を好きかってにとりあげられることはありません。


16条 ふたりで決める


おとなになったら、だれとでも好きな人と結婚し、家庭がもてます。結婚も、家庭生活も、離婚もだれにも口出しされずに、当人同士が決めることです。家族は社会と国によって、守られます。


17条 財産をもつ


人はみな、ひとりで、またはほかの人といっしょに財産をもつことができます。自分の財産を好きかってに奪われることはありません。


18条 考えるのは自由


人には、自分で自由に考える権利があります。この権利には、考えを変える自由や、ひとりで、またほかの人といっしょに考えをひろめる自由もふくまれます。


19条 言いたい、知りたい、伝えたい


わたしたちは、自由に意見を言う権利があります。だれもその邪魔をすることはできません。人はみな、国をこえて、本、新聞、ラジオ、テレビなどを通じて、情報や意見を交換することができます。


20条 集まる自由、集まらない自由


人には、平和のうちに集会を開いたり、仲間を集めて団体を作ったりする自由があります。しかし、いやがっている人を、むりやりそこに入れることはだれにもできません。


21条 選ぶのはわたし


わたしたちはみな、直接にまたは、代表を選んで自分の国の政治に参加できます。また、だれでもその国の公務員になる権利があります。 みんなの考えがはっきり反映されるように、選挙は定期的に、ただしく平等に行なわれなければなりません。その投票の秘密は守られます。


22条 人間らしく生きる


人には、困った時に国から助けを受ける権利があります。また、人にはその国の力に応じて、豊かに生きていく権利があります。


23条 安心して働けるように


人には、仕事を自由に選んで働く権利があり、同じ働きに対しては、同じお金をもらう権利があります。そのお金はちゃんと生活できるものでなければなりません。人はみな、仕事を失わないよう守られ、だれにも仲間と集まって組合をつくる権利があります。


24条 大事な休み


人には、休む権利があります。そのためには、働く時間をきちんと決め、お金をもらえるまとまった休みがなければなりません。


25条 幸せな生活


だれにでも、家族といっしょに健康で幸せな生活を送る権利があります。病気になったり、年をとったり、働き手が死んだりして、生活できなくなった時には、国に助けをもとめることができます。母と子はとくに大切にされなければいけません。


26条 勉強したい?


だれにでも、教育を受ける権利があります。小、中学校はただで、だれもが行けます。大きくなったら、高校や専門学校、大学で好きなことを勉強できます。 教育は人がその能力をのばすこと、そして人ととしての権利と自由を大切にすることを目的とします。人はまた教育を通じて、世界中の人とともに平和に生きることを学ばなければなりません。


27条 楽しい暮らし


だれにでも、絵や文学や音楽を楽しみ、科学の進歩とその恵みをわかちあう権利があります。また人には、自分の作ったものが生み出す利益を受ける権利があります。


28条 この宣言がめざす社会


この宣言が、口先だけで終わらないような世界を作ろうとする権利もまた、わたしたちのものです。


29条 権利と身勝手は違う


わたしたちはみな、すべての人の自由と権利を守り、住み良い世の中を作る為の義務を負っています。 自分の自由と権利は、ほかの人々の自由と権利を守る時にのみ、制限されます。


30条 権利を奪う「権利」はない


の宣言でうたわれている自由と権利を、ほかの人の自由と権利をこわすために使ってはなりません。どんな国にも、集団にも、人にも、そのような権利はないのです。