学校教室の使用に関する市教委からの正式回答と説明のまとめ
「北海道に夜間中学をつくる会」と「札幌遠友塾自主夜間中学」が札幌市教育委員会に求めていた、「学校の空き教室を使わせてほしい」との要望に対する正式回答が5月15日(木)午後6時、市教委会議室で行なわれました。つくる会事務局、遠友塾受講生やスタッフなど35人が出席しました。市教委からは岩井生涯学習推進課長、同課の中主査と伊藤社会教育担当係長の3人が出席しました。
はじめに岩井課長が、
窓口だった木村推進係長が異動になり中主査が引き継いだこと、正式回答(別紙@)は加藤生涯学習部長名で出しているが、本日部長は他の公務で欠席する旨を述べました
続いて配布資料をもとに、「つくる会」などが要望した高齢者や障がい者が使いやすい場所などの5項目の条件(別紙A)に合う、空き教室の調査結果を説明。地下鉄大通駅から4駅以内で、その各駅を中心とする500メートルの範囲の19校(別紙B)を調査したが、その結果は、希望条件に合う学校が一校もなかったと説明されました。
調査は、保有教室の現状や諸室の配置状況、今後の児童生徒数および学級数の推計、現在未整備の施設など、「ミニ児童会館」や「心の教室」への転用の予定などを考え方とし(別紙A)、学校長や管理者(教頭)から聞き取りをした。
次に岩井課長は、
一般的な学校の見取り図を黒板に書いて、1教室の狭さ(約8メートル×8メートル)ではスタッフを含めた今のような授業は難しい、特別教室は広いが理科の実験器材や家庭科の調理用具などが場所を占めており、思うような使い方が出来るかどうか、一般教室も児童生徒の持ち物が置いてあり、管理上の難しさがある、と使用に関して悲観的な見方を示しました。
そして、空き教室の使用には交通の便がやや悪くなったとしても、もっと範囲を広げるのはどうか。また、専用的というのではなく教育文化会館をベースにし、て、学校利用を夜間とか土日のみに限定して借り、体験学習的に使ってみるなどの方法もあるのではないか。そうした要望での調査や学校への仲介などの協力は、市教委としていとわないとの考えを述べました。
この回答と説明に工藤代表は、
教育を受ける権利は憲法26条で保障されているものであり、遠友塾は民間だがそれを担ってきたと自負している。1月の市議会文教委員会で教育長は敬意を表するとの発言をし、私たちの要望に前向きに検討して行きたいと答えている。なのに、使える教室は1校もなかったとの回答だ。
私たちは当初から、できるところから相談させていただきたいと申し入れているのであり、先の課長さんの発言と重なるが、どこか週1回でも使わせてくれないかと要望している。学校教育に支障の無い限り社会教育に開放するということだが、遠友塾は学校教育に支障があるということなのか。いったい学校教室の使用に関して、最大の障害、問題はどこにあるのか教えてほしい、と質しました。
遠友塾の井上事務局長は、
現行の授業の継続を第一に考えているため、4教室の要望も述べた。気になるのは、調査はこうした遠友塾の思いを伝えた上での学校長への聞き取りだったのかどうか。そして学校側の反応はどうだったのかを聞きたい、と質しました。
これらの疑問に岩井課長は、
遠友塾が学校教育の支障だということではなく、学校施設上の余裕が無いことや管理上の問題であると答えました。
また、学校を使って勉強したいとのことから、現状の水曜日に4教室を使うやり方を、そのままスライドするということで調査をしたわけではない。一般的な空き教室調査としたため今回のような結果となった。
従って相手が迷惑がったとか、そういう反応は調べていない。ただ前の担当からは、遠友塾の話をしたところもあると聞いている、と答えました。
工藤代表は、
望んでいるのは余裕があるなしにかかわらず、週1回どこかの学校で夜、教室を借りて勉強したいということである。
週1回1教室だけでも利用したい。そのためには、校長や教職員の同意が必要だろう。市教委にばかり任せるのではなく私たちも動く。一緒にお願いに行くことも検討していただけないか。細かい問題はたくさん出てくるだろうが、一つひとつハードルを乗り越えて行きたい。協力をお願いしたい、と要請しました。
井上さんも、3者で話しを進めることの約束を念押ししました。
続いて受講生やスタッフからの質疑応答が行なわれました。以下の通りです。
◇スタッフの白倉さん
昨年5月に上田市長は「遠友塾はすばらしい活動だ」と話され、希望を持ってきた。一生懸命に努力してくれていると思っていた。どこか教室を見つけてもらえると思っていた。今でも思っている。遠友塾の見学に見えられたが、みんな熱心に学んでいる姿をみて、どういう感想をもったかをお聞きしたい。
私は5月9日の道新「いずみ」欄(夜間中学を80歳で卒業した男性の話。別紙C)を涙なくして読むことはできなかった。これが北海道の現状だ。(そして「いずみ」を朗読)。こうした現実に行政として応える責任はないのか。
問題を一緒に考えて行きたい思いなのに、だんだん後退して行っている感じだ。市教委は一番大事な教育を担っている立場でしょう。どうすれば一緒になって願いが実現できるのか、その方法を教えてほしい。
星園高校跡なら受けやすいとの話だったので、私たちは地下鉄駅からの通学路を調べた。学校への道も明るくて期待をかけていたのに、それも無くなった。
担当者が代わったとしても、行政は継続性をもってやってほしい。
◇スタッフの泉さん
調査で「専用」と言っている意味がわからない。教室は朝から夜までずっと使われているということか。空いている時間はないのか。年間を通じて専用するには空きがないことは分かったが、水曜日に1回とかの具体的提案はできないのか。夕方4時から6時頃はどうなのか、放課後は子供たちも帰っているだろう。夜はどうなのか、具体的に使い方がイメージできる情報を伝えてほしい。
星園高校の場合、定時制単独の校舎なので夜は空いている。高校は小中学校よりも障害は少ないだろう。夜はずっと空いているはずで、先の協議の際、借りるとすればここを、というサインをそちら側が投げかけてきたと感じていた。回答を聞くとなにもなく、はぐらされた感じだ。どうなっているのか答えてほしい。
教室が狭いとかは要望と別のこと。使い方はこちらで考えることであり、貸してもらえるかどうなのかが問題なのだ。校長の了承さえ得れば、教育委員会として支障がないことなのか。
旭川でも遠友塾が開校した。26人が学んでおり最高齢は87歳だ。回答が10カ月も投げられてしまったが、受講生には急を要することであり、緊急性のある問題だと認識してほしい。
◇スタッフの境さん
市教委の方は遠友塾を見学にこられて分かっていると思うが、黒板(緑板)と違ってピカピカと見づらいホワイトボードを使っている。もっと受講生たちの希望に応えるべきではないか。また調査も遠友塾の名を出して、活動を理解してもらった上ですべきだ。市議会への陳情では全会派が要望を支持してくれた。市教委はもっと積極性をもってこの要望にあたってほしい。
◇スタッフ富田さん
確認だが、市長にはこうした案件を報告しているのか。これは皆さん方(行政)の案件であるとの認識がまず必要だ。市長にはきちんと協議の経緯や回答内容を伝えるべきだ。そうしないと市長の姿勢が問われることになる。
以上のことに対する岩井課長の回答、説明は以下の通りです(回答していないこともあります)。
▽ 遠友塾の見学については、市民会館の閉鎖にかかわり2年前に私も見学している。この3月に当時の担当係長が、今年度は異動があったので、先日5人ほど見学をさせてもらった。今回、回答の直前となったのは、スタッフが忙しい入学式を避けたためだ。
受講生の思いは、市民会館が閉鎖になる時、代わりの場所を確保してほしいとのはがきをたくさん頂いており、共感している。その熱意に応えるため、「ちえりあ」と教育文化会館を紹介した。交通の便から教育文化会館を選ばれたが、教文はできるだけ多くの団体に使ってもらうのが趣旨だが、遠友塾が教室として使えるよう話しを進めた。
個人的思いで言えば、叔母が農家で兄弟が多く小学校に通えなかった。読み書きができないため大変苦労したのを身近に見ており、新聞を読まれた思いと同じ思いでいる。ただ、仕事となればなかなか思い通りいかないこともある。
▽ 教室を貸す貸さないは、それぞれケースについて学校長が一つ一つ判断することだ。その場合、法的なことは校長も知っていることなので、校長裁量で貸す判断をしたのなら、一般論として問題はないと思う。教育委員会がその判断に横槍を入れることはない。
▽ 調査の仕方などについては今回意見を伺ったので、今後調査に回る時にはそのように(遠友塾の活動を理解してもらうこと)したい。担当は遠友塾が開校した旭川へも行って調べているし、本州の夜間中学の調査にも行く(学校の教室を使っている北九州市の城南中を予定)。視察から戻ったら連絡し報告をする。
▽ 星園高校跡については、2年後には所管が移る。どう利用するかは市全体の問題として扱われる。使いたいという要望があることについては、担当セクションにあげてある。
▽ 教育長にはこういう場でこういう説明をするとの報告はしているが、市長には場をセットしたことしか報告していない。この案件について承知しているとは思うが。
最後に受講生の桑山玉枝さんと伊藤フサ子さんが、学校に通えず読み書きできなかったことでのこれまでの苦労を話しました。遠友塾とめぐり合って学ぶことができた喜び、学校の門をくぐって勉強するのが夢であること(作文に書いた内容です)を涙ながらに語り(作文に書いた内容です)ました。山川允子さんも農家で満足に勉強できず、いま遠友塾で楽しく学び直していることを述べ、市教委へ支援を訴えました。