<街のうた> しなった看板

2009.02.27 北海道新聞朝刊地方


 札幌市中央区の向陵中で二十日に行われた、教職員から自主夜間中学「札幌遠友塾」への看板贈呈式。ケヤキ製の看板が、製作した高橋正幸教諭から渡されると、工藤慶一代表は顔を覆った両手を下ろせなくなった。看板は少しだけしなっていた。


 さまざまな事情から学校に通えなかった人々が通う同塾。教室探しには苦労してきた。


 向陵中は“校舎”候補となった昨夏から同塾に教室を貸し、工藤さんの話を生徒に聞かせるなど交流を重ねた。「ぜひわが校を」と機運が高まっていった。「運営に打ち込む工藤さんの姿勢、塾生たちの『学ぶ喜び』が生徒、教職員の心に響いた」(小原善孝教頭)結果だった。


 四月からの校舎使用に向け、使っていなかった第二玄関や物品庫を片付け、同塾専用の玄関と控室に変えた。看板も相談を重ねた末の案だ。


 材料は製材会社などを回って安く購入した端材。「店に行けば良い板もあるが、製板から始めたかった」と高橋教諭。学校の機械で板にし、かんなをかけ、のみで削り上げた「遠友塾」の浮き彫り。ケヤキの板のわずかなしなりは、教員たちの「お金よりも心を」という歓迎の気持ちの証しだ。(川原田浩康)