<暮らし さいけん>教育
*道東初の自主夜間中学「くるかい」*「学び直し」の場に*5月開校
*市、支援策も視野に*釧路

2009.03.06 北海道新聞朝刊地方 31頁 釧C


 道東初の自主夜間中学として、釧路市内に五月開校予定の「くるかい」に、戦中・戦後の混乱で十分な学習機会に恵まれなかった高齢者の参加希望が相次いでいる。一方、準備を進める市民グループは、不登校などで思うように学校に通えなかった人たちにも参加を呼びかける。社会的自立を支える「学び直し」の場にしてもらうのが狙いだ。(島田季一)

 開校準備にあたる「自主夜間中学」設立釧路準備会には、これまでに二十人を超す学習希望者と、四十人近い支援ボランティア希望者が参加に名乗りを上げた。年齢や国籍、学歴を問わず、学習者が読み書きから学び直すとともに、スタッフも一緒に学び合える場をつくるのが理想だ。

 夜間中学は、義務教育を修了できなかった人たちを対象とし、道外では八都府県に三十五校が「公立」として設置されている。このほか市民団体などが自主夜間中学を開校しており、道内は札幌市と旭川市にある。函館市でも今春の開校を目指している。

 釧路の準備会が、年配者のほかに学習者として想定しているのが「形式卒業者」。不登校や引きこもりなどで、学校に通えないまま、教育的配慮で卒業資格を得た人たちだ。

 読み書きなど基礎学力を十分身につける機会がなかったため、就職に必要な資格試験に挑戦することもできず、社会的に自立できない例も少なくない。

 各地の取り組みを見ると、こうした人たちが自立した社会生活を送るための支援機関としての役割を、自主夜間中学が担っている事例もある。

 このため、生活保護受給者が急増する釧路市も、生活支援の観点から自主夜間中学に注目。「情報を密にしながら、連携を持ちたい」(生活福祉事務所)という。連携の道は今後検討していくが、例えば生活保護を受ける人たちが自立に向けて釧路の自主夜間中学に通うような場合に、何らかの形で支援することも視野に入れる。

 準備会世話役代表の添田祥史・道教育大釧路校講師は、昨年九月まで九州で識字教室の活動に携わった経験を持つ。「教える側、教わる側−という形でなく、学ぶことの楽しさを一緒に共有できる場にしたい」と願う。

 このため、「教える側」に当たる学習ボランティアにもあえて教育経験は問わず、一方、子育てなどで学校現場を離れた元教員にも積極的に門戸を開いている。準備会は三月に二回、支援ボランティアの研修を行いながら、四月には学習ボランティアの実地研修も兼ねて、学習希望者の体験入学会を開く予定だ。

 詳しくは、準備会事務局の賀根村伸子さん(電)080・5595・7015へ。