「自主夜間中学」函館・釧路にも
2009年04月12日 朝日新聞
15日の入学式を前に打ち合わせをする「函館遠友塾」のスタッフ=函館市若松町の市総合福祉センター
■学び直したい
■20〜80代 「子守で断念」「孫に手紙書く」
■教える側「ともに成長」
さまざまな事情で学校に通えなかった人たちの学びの場「自主夜間中学校」が今春、函館と釧路に開校する。ボランティアが中心となって運営する自主夜間中学校は、道内ではこれまで、札幌と旭川の2市だけにあった。今回集まったボランティアは現職の教諭や大学生、主婦らなどさまざま。夜間中学は教えられる側だけではなく教える側も、ともに学ぶ場となりそうだ。
(横山蔵利、芳垣文子)
道教育委員会によると、自治体などが設置する公立の夜間中学校は8都府県で35校。それらは東京や大阪、神奈川など都市部に集中している。これを補うように、全国で約20団体が自主夜間中学を運営している。
道内の自主夜間中学校は、札幌で「札幌遠友塾」が90年に開校し、これまで約280人の卒業生を送り出しているほか、旭川で昨春、「旭川遠友塾」がスタートした。
函館市内で開校準備が進むのは「函館遠友塾」。七飯養護学校教諭の今西隆人さん(52)が代表を務める。今西さんは札幌の中学校に勤務していた頃、「札幌遠友塾」で英語と数学を教えていた。函館から札幌まで毎週欠かさず3年間通った生徒の姿を見て、函館でも学びの場を作りたいと思い立った。
入学希望者は20代から80代までの42人で、最高齢は87歳の男性。「子守で勉強に専念できなかった」「英語は敵国語として勉強できない時代だった」という70代、80代のほか、病気などのため十分に学校に通えなかった人もいる。「ゆっくりじっくり、学ぶことの喜びを味わってもらいながら、スタッフも一緒に学び合いたい」と今西さん。
釧路で開校準備を進めているのは、自主夜間中学「くるかい」の準備会(世話役代表=添田祥史道教大釧路校講師)だ。同会によると、「孫に手紙を書いてやりたいので字を覚えたい」「字が読めないので読めるようになりたい」など学習希望者は20代から80代の約60人。
函館も釧路も、教える側は現職の教諭や大学生、元教員のほか、主婦や専門学校生など多様だ。
函館市内の小学校教諭の男性(59)は「生涯教育に興味があった。『評価』が必要な学校とは異なる教育の場で、一生勉強を続けることについて考えていきたい」と言う。
釧路の準備会事務局を務める賀根村伸子さんは釧路市内で、不登校や引きこもりの親子を支援している。自主夜間中学校では教える側のスタッフとして、そうした子どもたちも参加する予定だ。「教えながら、教えてもらう。互いに成長してくれると思う」と期待している。
授業は、両地域とも週1回で、時間は約2時間。国語は、ひらがな、数学は、足し算・引き算といった基礎の基礎から行う。
函館の開校は15日。費用は事務・通信費と月1回の給食費合わせて年間4千円。入学式は午後5時半から、函館市総合福祉センターで行う。入学は1学期終了まで原則受け付けるが、約50人を超えると次年度になる。
釧路は5月9日に開校予定。開校を記念し、午後1時30分から釧路市生涯学習センターで記念講演を行う。
函館の問い合わせは、今西さん(080・5598・5608=平日午後4時以降)
釧路の問い合わせは賀根村さん(080・5595・7015)へ。
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000000904130002