2007年5月21日
札幌市長上田文雄様
北海道に夜間中学をつくる会
札幌遠友塾白主夜間中学
代表工藤慶一
要 望 書
誰もが教育を受ける権利を持ち、学ぶことが生きる喜びになることを実在のものとするため、札幌遠友塾自主夜間中学の授業が「札幌市民会館」で始まってから17年経ちました。その間の卒業生総数は、253名です。本年4月から、「札幌市教育文化会館」に学びの場を代え、新入生28名を含む受講生85名で新年度の授業がスタートしました。
戦争や病気などで学べなかった人達は他に学ぶ場がなく、現在も変わらず入学が続いています。最近は厚別区に多数在住する中国残留孤児とその家族や不登校の子どもたちなどの入学が増えてきました。こうした学びを求める大勢の人達の声に応えるため、長年にわたり学校の教室使用を求めてまいりましたが、未だかなえられていません。
昨年8月、目弁連より政府に「学齢期に修学することができなかった人々の教育を受ける権利の保障に関する意見書」が提出されました。この意見書の内容を基に、教育に関する下記の事項を要望します。担当される部署の方々との話し合いを始めさせていただき、できるところから施策を講じていただければ幸いです。
要望
義務教育を受ける機会が実質的に得られなかった人達の実態の把握を可能な限りすすめながら、
@ 北海道におけるセンター校の役割を担う公立夜間中学(公立中学校夜間学級)を札幌市に開設すること。
A 道内の自主夜間中学を運営する民間団体に対し、学校の教室使用を主とする施設の提供と財政的支援を行うこと。
B 教育を受ける機会を保障するため、個人教師の派遣などの施策をすすめること。
C シニアスクールなど、既存の学校の受け入れ対象者を拡大すること。
D 住所変更届けや病院の問診票など、公的書類の漢字に「ひらがな」をふり、苦しみを和らげること
【要望内容補足】
(1) 北海道で実質的に義務教育の機会を得られなかった人達の数と地域
前回の国勢調査(2000年10月実施)によると、道内において小学校未修了者数だけで、9,600人おります。これに中学校未修了者や学んでいないが中学校の卒業証書だけをもらった形式卒業者、さらに就学免除者や就学猶予者、また外国からの帰国ないし渡日してきた人々を含めると、10万人以上の実質的に義務教育の機会を得られなかった人達が北海道で暮らしていると推定されます。
札幌遠友塾自主夜間中学には、旭川、風連、釧路、函館などといった遠くから通った卒業生がいました。また今年、新聞記事やテレビ放映を通じて遠友塾を初めて知った人達からの問い合わせが、札幌近郊のみならず旭川、根室、北見、苫小牧、室蘭、函館などといった道内各地からありました。実質的に義務教育の機会を得られなかった人達が、広範囲にわたって存在することが、北海道の特徴となっています。
(2) いかに学ぶ機会を保障していくか?
日本国憲法第26条に明記されている教育を受ける権利を保障するため、先の北海道の事情をふまえた上で、通学可能な道内各地に夜間中学を開設する必要があります。(なお、義務教育を終えた前提で行われる生涯教育や杜会教育と夜間中学は全く性格を異にするものです。)
道内各地に民間ボランティアの手で、遠友塾のような自主夜間中学が開設されたとしても、具体的に授業をすすめる上で必要とされる経験交流や専門性、さらに施設(実験室や音楽室などがなく、教材置き場もない)の問題などの困難がともないます。このために、北海道におけるセンター校の役割を果たす札幌での公立夜間中学の開設と、白主夜間中学を運営する民間団体への施設提供と財政的支援を要望します。さらに、通学できない人ヘの個人教師の派遣も検討していただきたいと思います。
(3) 既存の小中学校での受け入れ対象者の拡大について
遠友塾に在籍する桑山玉枝さんは、どこで学んでいいのか分からず、近くの小学校の校長先生に掃除でも何でもするから1年生の国語の授業を受けさせてほしいと何度も頼みましたが、断られた経験を持っています。
岡山県では、こうした学べなかった人達のために、シニアスクールを開校し小学校生徒との交流を行い、子どもと大人との双方に、成果がもたらされております。広い北海道をカバーしていくためには、既存の小中学校で大人を受け入れることが最終的な解決につながると思います。札幌市清田区の三里塚小学校の実践もふまえ、施策に反映していただきたいと思います。
(4) 公的な書類への「ひらがなふり」について
2001年12月、国連総会は2003年から2012年までを「国連識字の10年:すべての人に教育
を」と宣言しました。これについて、行政としてどのような取り組みをされていますか?
役所や病院で、書類にひらがなをふってあれば、今までどれほどの人達が救われたことでしょう。できることから取り組んでいただきたいと切に要望します。