札幌遠友塾自主夜間中学
北海道に夜間中学をつくる会
代表 工藤 慶一
札幌には、戦争や病気など様々な理由で学ぶことのできなかった人達が、毎週水曜日の夜、教育文化会館の会議室を教室にして学ぶ学校があります。名を「札 幌遠友塾自主夜間中学」といいます。1990年に始まり、今までに253名の卒業生を送り出してきました。受講生の年代は10代から80代と幅広く、現在 も85名の人達が学んでいます。「遠友」という名は、明治27年から昭和19年まで50年間続けられた「遠友夜学校」からいただきました。この学ぶ場を設 けた理由は、日本国憲法第26条にある教育を受ける権利を実在のものとしたいという願いからでした。
遠く旭川・風連・釧路・函館から3年間通った卒業生もいました。また小さい時に子守りに出された為に学べなかったある女性は、結婚しようと思い彼 の実家に行ったところ、彼の母親から「教育のない母親に子供を育てることはできませんよ」と言われ、あまりのショックに二度と結婚しようと思わなくなった こと・友達と待ち合わせをしてもビルの名前が読めなかった為に大変困ったことなどを教えてくれました。ようやく遠友塾にたどりつき、今では手紙を出せたり 立派な作文が書けるまでになっています。さらに、中国残留孤児と家族の人達・就学免除で学校へ行ったことのない人・不登校を経験し家に閉じこもりになった 人達など、たくさんの人々が遠友塾の門をたたきます。学ぶ喜びで笑顔一杯になる受講生と共に歩むことができること、これが私達スタッフの誇りでもあり、幸 せでもあります。
しかし、こうした学びの場を維持していくためには様々な困難が伴います。何よりも、以前教室として使用していた札幌市民会館がなくなる事態に直面した時のように、教室場所の確保の問題があります。あらゆる努力を傾けて、ようやく今年春から教育文化会館に決まりましたが、私達の本当の願いは、学校の教室で授業を行う事です。できれば毎晩、充分な教室数が確保され、教材や図書がそろえられた中で、個々人の実状に応じた授業を行いたいからです。
昨年の8月10日、日本弁護士連合会の人権擁護委員会から政府文部科学省に「学齢期修学することのできなかった人々の教育を受ける権利の保障に関する意見書」 が提出されました。これは全国夜間中学研究会(全国34校の公立夜間中学校と20数校の自主夜間中学で構成されている)が2003年2月に人権救済の申立 を行い、日弁連が受け入れたものです。この意見書の内容を基に、新たに「北海道に夜間中学をつくる会」を設立し、教育に関する以下の要望書を北海道と札幌 市に提出しました。
要望書
義務教育を実質的に得られなかった人達の実態把握を可能なかぎりすすめながら、
(1)道内の自主夜間中学に対する施設の提供と財政的支援を行うこと。
(2)センター校の役割を担う公立夜間中学校を札幌市に開設すること。
(3)個人教師の派遣などの施策を進めること。
(4)シニアスクールなど、既存の学校の受入対象者を拡大すること。
(5)住所変更届や問診表など、公的書類の漢字に「ひらがな」をふり、苦しみを和らげること。
北海道には10万人をこえる、実質的に義務教育を得られなかった人々がいると推定されます。このため、まず道内各地に遠友塾のような自主夜間中学の開設をすすめ、さらに公立夜間中学校の開設を求めて行き、学びたいという声に生涯をかけて応えていきたいと思います。
今回、思いもかけず2007年度札幌弁護士会人権賞をいただきました。人権の中の人権とも言われる「教育を受ける権利」を実在のものとする活動を お認め下さったことに心より感謝申し上げるとともに、人権擁護委員会の方達をはじめ、弁護士各位様に今後とも私達の力になって下さいますよう、よろしくお 願い申し上げます。
毎週水曜日の夜、教育文化会館の3階と4階で授業が行われています。一度学びの場を見学していただければ幸いです。
ありがとうございました。
※ この挨拶は札幌弁護士会のサイトからの転載です。
※ 札幌弁護士会の該当ページ: http://satsuben.or.jp/info/activity/2007/12/post_1.html