2007年9月20日 北海道議会 第3回定例会本会議
1 小林郁子議員(民主党)の質問 |
2 吉田教育長の答弁 |
3 吉田教育長の答弁 |
4 小林郁子議員の再質問 |
○22番小林郁子君(登壇・拍手)民主党・道民連合の小林郁子です。
通告に従い、順次質問をいたします。
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最後に、教育問題について伺います。
一つ目は、特別支援教育についてです。
特別支援教育に関する基本方針の素案が発表され、おおむね10年間の基本的な考え方と施策の方向性を示しています。
国際的には、2006年に国連において障害者の権利条約が採択され、障害のある子供について、すべての教育段階においてインクルーシブな教育制度を確保することが示されています。共生社会を基本とし、特別なニーズがある人には特別な配慮をするというのが国際社会の動きです。
日本における学校教育法の改正による特別支援教育に依拠したこのたびの道教委の基本方針素案は、国際社会で求められている方向へ最大限の努力をすべきものと考えます。
そこで1点目に、北海道の目指す障害児教育の理念は何か、伺います。
2点目は、普通高校における受け入れ体制についてです。
このたび、公立特別支援学校配置計画が策定されました。これにより、次年度に向けて、知的障害の高等養護学校について48名の定員枠拡大を図ることなどを掲げていますが、近年の普通学級からの志願者の増加を勘案すると、この拡大枠では不十分であり、また、このたびの間口拡大に生活科が含まれていないことから、比較的障害の重い子供がやむなく家庭を離れ、遠方の学校で寄宿舎生活を送らなければならず、本人及び保護者の精神的・経済的負担が大きくなっています。
こうした事態は、通常学級に通う比較的軽度の知的障害や発達障害の生徒が、専門性のある教育を求めて高等養護学校を希望する場合もふえていることが一因と見られており、一人一人にふさわしい教育を保障するためには、普通高校における障害者受け入れ体制の整備を図ることが緊急の課題となっています。
そこで、普通高校における軽度な知的障害や発達障害のある生徒の受け入れ体制を整備すべきと考えますが、いかがか、伺います。
3点目は、有朋高校の跡地に関してです。
高橋知事は、このたびの選挙において、有朋高校跡地の有効活用も含め、特別支援教育体制の充実を図ることを公約しています。この地は、有朋高校を屯田季実の里に移転させることによって生まれたものです。
有朋高校は、道内唯一の単位制、通信制をあわせ持つ高校として全道から生徒が通うところであり、交通利便性が高いこの地からの移転については多くの反対があり、行政訴訟にもなっています。
このような経過のある中で、この跡地を売却することなく、知事公約を生かしてこそ、教育行政における一貫性が保たれるものと考えます。
有朋高校がこの地にあるとき、近くにある道立高等盲学校と交流を行っていました。このような実績の残るこの地に老朽化が著しい道立高等盲学校を移転し、総合的な特別支援学校として設立することが、障害者にとっても、地域にとっても期待されています。
そこで、有朋高校の跡地については、道立高等盲学校の移転などを視野に入れた総合的な特別支援学校を設置することに使うのがふさわしいと考えますが、いかがか、伺います。
二つ目は、夜間中学についてです。
病気や戦争などで学ぶことのできなかった人たちに、これまで17年間にわたり学びの場を提供している札幌遠友塾自主夜間中学があります。この塾のボランティア活動により運営される自主夜間中学を卒業した人は、今や253名に上ります。
2000年の国勢調査によりますと、北海道には小学校未就学者が9600人いるとの結果が出ています。さまざまな事情で学ぶことのできなかったこうした人たちに学びの場を提供し、学ぶことの喜びを享受する機会を保障するこのような夜間中学の設立は、民間の自主的な力にのみまつべきものではなく、国、自治体の責務であると考えます。
そこで1点目に、北海道におけるセンター校の役割を担う公立夜間中学の札幌市への設置要望にかかわり、札幌市において現在検討が行われていると聞いていますが、公立夜間中学の設置に対する道教委の考え方と、あわせて、札幌市に対してどのような対応を行っているのか、お伺いをいたします。
2点目は、自主夜間中学への支援についてです。
札幌市のほかに、このたび旭川市において自主の夜間中学を開校する準備をしていると聞いていますが、こうした道内各地における自主夜間中学を運営する団体に対し、学校の教室など施設の提供と財政的支援を行うべきと考えますが、いかがか、伺います。
以上、再質問を留保して、私の質問を終わります。(拍手)(発言する者あり)
○議長釣部勲君 知事高橋はるみ君。
○知事高橋はるみ君(登壇)小林議員の質問にお答えをいたします。
○議長釣部勲君 教育長吉田洋一君。
○教育長吉田洋一君(登壇)小林議員の御質問にお答えいたします。
初めに、特別支援教育に関しまして、まず、その理念についてでございますが、本道におきましては、これまで、児童生徒一人一人の障害の種別、程度などに応じ、自立と社会参加に向けた専門的できめ細やかな教育を進めてきたところであります。
道教委といたしましては、本年4月より特別支援教育が本格的にスタートしたことを踏まえ、障害に応じた専門性に基づく教育を推進すること、できる限り身近な地域において指導や支援を受けられる体制を整備し、きめ細やかな教育を推進することを基本的な考え方として、障害のある児童生徒など、一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、高校における支援体制の整備についてでございますが、これまで、障害のある生徒の高校への受け入れにつきましては、高等学校の目標を達成するための一定の学力を備え、日常の学校生活を送る上で大きな支障がないことなどを踏まえ、校長が判断することとしており、入学者選抜における特別な配慮や、入学後の施設設備の整備などについて、生徒、保護者、中学校と事前に十分相談して対応してきているところであります。
道教委といたしましては、高校における特別支援教育の推進に向け、今年度中にすべての道立高校において、校内委員会を設置するとともに、特別支援教育コーディネーターを指名するなど、校内体制の整備を行うこととしており、さらに、特別支援学校との連携を図りながら、今後とも、障害のある生徒一人一人の状況に応じた適切な学習指導や必要な支援の充実に一層努めてまいる考えであります。
次に、視覚障害の特別支援学校についてでございますが、本道では、幼・小・中学部を併設する盲学校4校と高等盲学校1校が設置されており、これらの学校におきましては、点字の読み書きや弱視レンズの使用などの障害の特性に応じた専門的な教育や、基礎学力の定着などを図る教育を行うほか、高等盲学校専攻科におきましては、あんま、マッサージ、指圧など、理療に関する職業教育を行ってきているところであります。
盲学校につきましては、特別支援学校の中でも在籍者数が少なく、その数が減少しておりますことから、このたび公表いたしました特別支援教育に関する基本方針の素案におきまして、そのあり方について検討するとしているところでございまして、今後、早期に検討を進めてまいります。
次に、公立夜間中学についてでございますが、公立中学校に二部授業を行うためのいわゆる公立夜間中学を設置する際、中学校を設置しております市町村が都道府県教育委員会に届け出を行うこととされております。
先般、道教委におきましても設置に関して要望をお受けいたしましたことから、その取り組みの状況などについて札幌市教育委員会と情報交換を行ったところでございますが、今後引き続き、関係自治体から、教育内容や教員の配置など、夜間中学設置に係る相談や問い合わせなどに対しましては、必要な助言指導を行ってまいりたいと考えております。
今後におきましても、それぞれの地域において住民の方々の自主的な活動が促進され、より多くの方々に学ぶ機会が提供されるよう、市町村への情報提供や、空き教室など、公共施設の有効活用などについて働きかけをしてまいりたいと考えております。
なお、現在、道内で自主夜間中学の活動を行っている団体は札幌市を中心に学習活動を行っていると承知しておりますが、この団体におきましては、札幌市の支援を得ながら、札幌市教育文化会館の会議室を利用して、社会教育の一環として活動していると伺っているところであります。
以上でございます。
○議長釣部勲君 小林郁子君。
○22番小林郁子君(登壇・拍手)(発言する者あり)ただいま、それぞれについて御答弁をいただきましたが、要望、指摘を含め、再質問いたします。
教育問題についてです。
特別支援教育については、2005年に発達障害者支援法が施行され、障害の認定も進んでいる今、特別支援学校の間口の拡大を図る施策のみでは実情に追いつかないことが考えられます。
このたびの特別支援教育に関する基本指針素案にあるように、地域性を確保するという基本的な考え方に沿って、普通高校における体制の整備を進める必要があることを指摘しておきます。
有朋高校の跡地については、この有効活用に触れた知事公約を生かし、障害当事者、関係者、地域住民などを含む協議の場を設けることを強く要望しておきます。
また、それに当たっては、屯田まで通うことが困難になっている生徒の利便性を図るため、さらには、特別支援学校の生徒がさまざまな人と交流する機会を確保するため、有朋高校のサテライトをあわせ設けることを要望します。
夜間中学についてです。
昨年8月、日本弁護士連合会は、義務教育未修了者について、憲法26条に定める教育を受ける権利や、教育基本法3条の教育の機会均等を侵害されているとして、文部科学省に対し、未修了者の実態調査や、地域の実情に合わせた夜間中学の設置を市町村及び都道府県に指導することと、自主夜間中学への施設提供、財政支援などを求める意見書を提出しています。
2007年3月現在、公立夜間中学は、東京、大阪など8都府県に35あり、約2500人の生徒が在籍しています。北海道は、義務教育未修了者が大阪に次いで2番目に多いことが2000年の国勢調査からも推計されています。
これらのことから、教育行政の責務として、夜間中学への取り組みを積極的に進めることを求めます。
以上、再々質問を留保して、私の再質問を終わります。(拍手)(発言する者あり)