//////////////////「すべての人に義務教育を!21世紀プラン」///////////////
■趣旨■
これは、「いつでもどこでもだれでも」「何歳でもどの自治体に住んでいてもどこの国籍でも」基礎教育としての義務教育が保障されることを目ざし全国夜間中学校研究会が2008年12月5日に採択した文書です。
現在公立夜間中学校は東京、千葉、神奈川、大阪、京都、奈良、兵庫、広島の8都府県・35校しかありません(生徒二千数百名)。
また、諸外国で普及していると言われる通信制教育も日本では都内在住・在勤者のみを対象とする東京・千代田区立一橋中学校(通信制)1校しかありません(大阪市立天王寺中学校は5教科のみの通信制のため中学校の卒業資格は得られません)。
一方、沖縄県南城市では2007年度より高齢者のための「リカレント教育」が始められました。これは、様々な事情により義務教育を修了していないか、義務教育を充分に受けられなかった1932年〜1940年生まれの方を対象に、小学校5・6年生又は中学校1年生に混じって授業を受けられるという制度です。(琉球新報2008年1月24日号 「学ぶ喜び高齢者再び 小中学生と机並べる」)
今回、日弁連意見書の趣旨や様々な現状を踏まえて、公立夜間中学校の全国各地への開設を中心としながらも、さらに多様な形態を通じて、日本に住む人々が何らかの形で基礎教育としての義務教育を受けられることを目ざし、「21世紀プラン」を採択しました。
■「すべての人に義務教育を!21世紀プラン」及び今後の組織のあり方について
〜第54回全国夜間中学校研究大会にて以下の内容が採択されました〜■
2008年12月5日 全国夜間中学校研究会
はじめに
2006年8月10日、日本弁護士連合会より「学齢期に修学することのできなかった人々の教育を受ける権利の保障に関する意見書」が国に提出されました。この中で、日本弁護士連合会は、憲法や国際人権規約、ユネスコ学習権宣言等の諸法規や条約などを根拠に、学齢超過者を含む人々の学習権を広く認めています。とりわけ、様々な手段を尽くしての義務教育を受ける権利の保障を求めています。
国の調査でも、約70万人の義務教育未修了者が存在し(1985年中曽根康弘首相国会答弁書)、158,891名の未就学者(学校へ行ったことがない者又は小学校中途退学者:2000年国勢調査)がいるとしています。また、私たちは、百数十万人の義務教育未修了者がいると推測しています。
日本人中高齢者、元不登校・ひきこもりの若者、障がい者、中国帰国者とその家族、在日韓国・朝鮮人、仕事や国際結婚等で来日した外国人とその家族(新渡日外国人)など、様々な人々が、生活や資格、進路等のため、そして、人間として当たり前に生きる権利として、義務教育の保障を切実に求めています。
しかし、全国には公立夜間中学校は8都府県に35校しかなく、入学のため、転居をしたり遠距離通学をしいられたりしてるほか、圧倒的に多くの方は入学を断念しています。さらに全国約20カ所で行われている自主夜間中学にも十分な行政の手が行き届いていません。
私たち全国夜間中学校研究会は、行政が保障すべき、権利としての義務教育の完全保障を目指し、以下「すべての人に義務教育を!21世紀プラン」を提案し、各地の実情を踏まえ、行政施策等の改善充実を求めていきます。
1,「夜間中学校の広報」を行政施策として求めます。
夜間中学校の存在を知らない義務教育未修了者すべてに「教育を受ける権利があること、義務教育を必要とする人々のために夜間中学校があること」を知らせること
2,「公立夜間中学校の開設」を行政施策として求めます。
(1) 全都道府県及び政令指定都市に最低1校以上の公立夜間中学校を開設すること
(2) 公立夜間中学校開設を求める自主夜間中学のある自治体に公立夜間中学校を開設すること
3,「自主夜間中学等への援助」を行政施策として求めます。
行政に代わって義務教育未修了者の「教育保障」を担っている自主夜間中学への行政からの十分な施設提供や財政援助等の実施
4,「既存の学校での義務教育未修了者の受け入れ・通信制教育の拡充・個人教師の派遣等の推進」を行政施策として求めます。
(1)小学校、中学校、特別支援学校等で、広く義務教育未修了者を受け入れること
(2)各都道府県での通信制教育の実施
(3)全国各地の通学困難な義務教育未修了者のための個人教師派遣
(4)その他、義務教育保障にとって必要なこと
1, 前述の一、目標「すべての人に義務教育を!21世紀プラン」の達成のために、現在の人権救済申立専門委員会を発展・改組し、「すべての人に義務教育を!専門委員会」を設置します。なお、この専門委員会は、恒常的な専門委員会として、長期にわたり活動を行っていくものとします。
2, この専門委員会は、公立夜間中学校開設を目指している自主夜間中学等の運動や地方弁護士会をはじめとした様々な関係者と連携・協力し、日本弁護士連合会より出された「学齢期に修学することのできなかった人々の教育を受ける権利の保障に関する意見書」その他を活用しながら、全国やそれぞれの地域の実態・実情にあわせた取り組みを企画・実施します。
3, 専門委員数は、原則として各都府県1名とし、さらに各都府県の実情に応じて増員できるものとします。 専門委員会の運営にあたっては理事会及び事務局と充分連絡をとるものとします。 専門委員会は、各地区(関東地区及び西日本地区)で随時、専門委員会を開くとともに,原則として年2回(全国夜間中学校研究大会及び理事会の開催時)、専門委員会の全体会議をひらき、全国やそれぞれの地域の取り組みの情報交換等を行い、全国及び各地域の共通課題や問題点を明らかにし、具体的な方策を検討します。