夜間中学設置求め要望書採択へ 神戸で来月全国大会
夜間中学の授業。日本人だけでなく、中国、ベトナム、在日コリアンら、さまざまな国籍、年齢の生徒が学ぶ=神戸市須磨区大黒町5、市立丸山中学校西野分校(撮影・中西大二)
60年前に全国で初めて公立夜間中学校が誕生した神戸で、12月4、5日、「全国夜間中学校研究大会」が開かれる。全国の夜間中学では義務教育未修了者ら約2500人が学ぶが、学校教育法に規定はなく、その整備は各自治体の判断に委ねられている。整備に積極的な民主党が政権に就いたこともあり、大会では夜間中学の位置づけを定めた法律の制定を求める要望書を採択する予定だ。(高田康夫)
公立夜間中学は、兵庫の3校を含め、全国8都府県に35校を数える。
神戸市長田区の駒ケ林中学校に、創設されたのは1949(昭和24)年。国は設置に消極的で、「神戸教育史」は、「どの法律を適用したのか」と厳しく問う文部省(当時)に、市側が「(全日制中学の)二部授業です」と答えたとの逸話を紹介している。
神戸市立丸山中学校西野分校の草京子教諭(56)は「今も夜間中学の法的根拠は当時と同じ」と話す。法的裏付けが無いため、費用対効果で予算が削減されかねない不安定な状況にある。
一方、2000年の国勢調査では、小学校未修了者は全国で約16万人(県内約6500人)。中学未修了者を含めると、その10倍が義務教育未修了者数と推測され、夜間中学の必要性は依然として高い。
このため、全国夜間中学校研究会は03年、日本弁護士連合会に人権救済を申し立て。日弁連は各都道府県、政令市に1校以上の夜間中学設置を求める意見書を国に提出した。今年6月、民主党が夜間中学を念頭に「学校教育環境整備法案」を参院で通過させたが、衆院解散で廃案となった。
研究大会は、全国から約400人が参加し、神戸市中央区東川崎町1の同市総合教育センターで。4日は神戸大の浅野慎一教授の講演など、5日は阪神・淡路大震災で被災した在日コリアンがモデルの一人芝居「ワルルル…!」などがある。
問い合わせは神戸市立丸山中学校西野分校TEL078・736・2521
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0002532904.shtml
(2009/11/22
15:05)神戸新聞
今も影落とす貧困、戦争 神戸で夜間中学全国大会
夜間中学が最も早く設立された神戸で開幕した全国夜間中学校研究大会=4日午前、神戸市中央区東川崎町1、神戸市総合教育センター(撮影・笠原次郎)
60年前に初めて公立夜間中学校が誕生した神戸で4日午前、「全国夜間中学校研究大会」が始まった。会場の神戸市総合教育センター(同市中央区東川崎町1)には全国の夜間中学生と指導する教諭ら約350人が集まった。神戸大大学院の浅野慎一教授が、関西の夜間中生徒に実施した調査結果を発表し、「よりよく生きるための学習の場となっている」と重要性を指摘した。(高田康夫)
調査は兵庫、大阪、京都、奈良の全18校の生徒が対象。747人から回答があった。国籍、出身地、話しやすい言語から、日本系が28%、在日コリアンなどの韓国朝鮮系35%、中国残留日本人を含む中国系26%などだった。
中学に行けなかった理由として、日本系と韓国朝鮮系は「経済的な苦しさ」と「戦争」が多く、中国系は「日本に住んでいなかった」が最多。生活の悩みは「経済的に苦しい」とする回答が各グループに共通して多く、浅野教授は「戦争に起因する不就学が、現在の生活にも影響している」と指摘した。
悩みの相談相手を聞く質問では、家族、親類以外では夜間中学で知り合った先生や友達を挙げる人が30%以上で、近所や職場の人より多かった。
夜間中学に望むことは「夜間中があることをもっと知らせてほしい」が最多で、「もっと早く行けば人生を変えられた、との思いが込められている」と浅野教授。「国籍や文化が多元化する中、日本語ができることを前提とした義務教育が対応できていない。さまざまな生徒がいる夜間中学から学ぶべきことがある」とした。
生徒の体験発表では、東京や広島の生徒とともに、神戸市立丸山中学西野分校1年の在日コリアン2世の男性(60)が、夜間中学に通いながら仕事と勉強を両立していることを話した。
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0002559491.shtml
(2009/12/04
15:30)神戸新聞
全国夜間中学校研究大会が閉幕 神戸
神戸市中央区の市総合教育センターで開かれていた「全国夜間中学校研究大会」は5日、夜間中学の設置根拠となる法案成立を目指すとともに、義務教育未修了者が学べる環境づくりを求める要望書を採択し、閉幕した。
要望書は国や自治体に向けたもので、今年6月に参院を通過しながら廃案になった「教育環境整備法案」の成立を求めて働きかけることを表明。障害で就学猶予・免除となった人が再び教育を受けられる環境整備も内容に盛り込んだ。
また交流会では、全国の公立、自主夜間中学の生徒計約400人が阪神・淡路大震災の復興の歌「しあわせ運べるように」を合唱した。 (高田康夫)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0002562483.shtml
(2009/12/05
19:46)神戸新聞
みんなで描く通学時の夕日 夜間中学の29人
2007/02/10 神戸新聞
和気あいあいと絵を描く夜間中学の生徒たち=須磨区大黒町5
生活に追われるなどして就学できなかったお年寄りらも通う神戸市須磨区大黒町の夜間中学、丸山中学西野分校で、全校生による絵画「夕日に向かって」がこのほど完成した。卒業を間近に控えた生徒の提案で、登校時にいつも眺めた街の夕焼けを丹念に描いた。完成の瞬間、教室から自然と拍手が沸き起こった。卒業生を送る会や入学式で披露する。(金海隆至)
同分校はもともと長田区にあったが、一九九五年の阪神・淡路大震災で校舎が倒壊。二度の移転をし、翌年十月に現在の太田中学内に移った。そして昨年九月からは太田中の建て替えに伴い、運動場の仮設校舎で午後五時半から四時限の授業をしている。
三学年で二十-七十四歳の二十九人が通う。かつては貧困や差別に苦しんだ在日韓国・朝鮮人が多かったが、近年は、仕事を求めて来日し、日本語が不自由な中国人やベトナム人が半数近くを占めるように。
絵画の制作は、共同作業の楽しさを感じられるようにと、美術の山村幸則講師(35)が、昨年に続いて指導。今年は「きれいな夕日を見ながら、学校に通ったこと一生忘れない」という生徒の女性(72)の言葉をもとに、仮設校舎から望む須磨の光景を題材にした。
画用紙を張り合わせたキャンバスは縦一・八メートル、横二・六メートル。生徒らは二週間にわたり、墨で輪郭を描き、水彩絵の具で色づけをした。提案した女性は「私が思っていたことが形になるなんて。先生に気持ちをくんでもらったありがたみを感じる」と感慨深げ。背景には生徒全員が、習いたての文字で川柳を書いた。
長田区の金山千代子さん(71)も「みんなで作ったのは初めてだから、うれしい」と完成を喜んだ。五人兄妹でただ一人小学校卒業がかなわず、退職した二年前に入学を決意した。ノートを広げ、学ぶ喜びを実感する日々。クレヨンで書いた川柳は「おとうさん/送りむかえを/ありがとう」。夫への感謝を記した。
http://www.kobe-np.co.jp/chiiki/ko/0000237867.shtml
学ぶ場つくろう 住民有志が準備 篠山市
2006/03/01 神戸新聞
名前や住所が書けない、計算ができない―。日ごろの生活の中で読み書きに困っている人たちが学ぶための場を篠山市につくろうと、住民有志が準備を進めている。「丹波・篠山よみかきの会」。四月十二日から同市中野の中野隣保館で開催する予定で、受講生や協力してくれるスタッフを募集している。(金山成美)
二〇〇〇年の国勢調査で、小学校を卒業していない住民は全国で約十六万人、兵庫県で約五千人いることが分かっており、篠山市内でも数百人いることが推定される。さらに歴史的な背景や家庭の事情、障害や病気などのため、中学校卒業程度の学力がない人が全国に約百七十万人いるとする推計もある。
設立を呼びかけているのは、同市民ら三人。篠山市職員の松浦龍司さんは、役所で市民と接する中で、読み書きが思うようにできずに手続きに手間取る場面に接し、心を痛めていた。篠山市人権・同和教育研究協議会の川西なを恵さんは、事務局業務や同協議会が実施している「篠山市在日コリアン足跡調査」を進める過程で、教室の必要性を痛感。丹波市山南町在住で夜間中学校講師の松原薫さんは、夜間中学校の空白地域の解消を願っていた。
篠山市や丹波市には現在、在留外国人に対する日本語教室があり、かつて識字教室のようなものもあったというが、今は存在していない。全国的には、「国連識字の十年 すべての人々に教育を」が始まった二〇〇三年に数十カ所だった同じような教室が、四百カ所近くまで増えているという。
「具体的に学びたいという声が上がっていなくても、まず学ぶ場所をつくることが必要」と三人。「読み書きの勉強を必要とする人が一人でもいる限り、それに応えたい」と話している。
毎週水曜日、午後七時から同九時まで。交通手段の相談も応じる。問い合わせは同市人権・同和教育研究協議会TEL593・1260へ。
http://www.kobe-np.co.jp/chiiki/ta/00048861ta200703011000.shtml